病院でリハビリに携わっている理学療法士(PT)・作業療法士(OT)の方なら、一度は「訪問リハって実際どうなんだろう?」と考えたことがあるのではないでしょうか。
病院と在宅。働く場所が変わるだけのように思えますが、実際に訪問の現場に出ると、リハビリの見え方はかなり変わります。
そこにあるのは訓練室ではなく、ご利用者が毎日暮らしている「生活そのもの」だからです。
※制度上、訪問看護ステーション所属のPT・OTによる訪問は「訪問看護の一環」です。本文では一般的な表現として「訪問リハ」を使用いたします。
訪問リハだから見える「その人の本当の生活」
病院では、平らな廊下や訓練用の階段など、リハビリを行いやすい環境が整っています。
一方、自宅へ伺ってみると状況はまったく違います。
玄関には段差があり、廊下は狭く、いつも座っている椅子からトイレまでの間には家具が置かれている。2階に寝室がある家もあれば、昔ながらの住宅で上がり框が高いこともあります。
「病院では歩けていたのに、自宅では移動が難しい」
そんな場面も珍しくありません。
訪問リハの面白さは、身体機能だけを見るのではなく、実際の住環境や生活習慣、ご家族との関係まで含めて考えられるところにあります。
理学療法士の専門性は訪問でどう生きる?
PTが得意とするのは、立つ、座る、歩くといった基本動作や身体機能へのアプローチです。
訪問では、そこからもう一歩踏み込みます。
たとえば目標が「歩けるようになる」だけではなく、「自分でトイレまで行く」「近所まで買い物に行く」「玄関から安全に外へ出る」といった、具体的な生活場面につながっていきます。
同じ10メートルを歩く場合でも、病院の廊下と自宅では条件が違います。
どこにつかまれば安全か。家具の位置は適切か。福祉用具が必要か。家の外には坂道があるか。
身体だけでなく「人・動作・環境」を一緒に考えることが、訪問で働くPTの醍醐味の一つです。
作業療法士の専門性は訪問でどう生きる?
OTにとっても、自宅は専門性を発揮しやすい場所です。
食事、着替え、入浴、料理、洗濯、掃除。そして趣味や外出。
生活の中には、その人にとって意味のある「作業」がたくさんあります。
「また自分でコーヒーを淹れたい」
「庭の手入れをしたい」
「家族の食事を作りたい」
こうした希望は、一見するとリハビリらしく見えないかもしれません。しかし、その人が大切にしてきた生活を取り戻すという意味では、とても重要な目標です。
ご利用者の「できること」だけでなく、「やりたいこと」に目を向けられる。そこに訪問で働くOTならではの面白さがあります。
訪問リハで感じられる3つのやりがい
1.ご利用者とじっくり向き合える
訪問では一人のご利用者の生活空間に入り、その方の困りごとや目標を一緒に考えます。
「最近、玄関まで行けるようになった」
「久しぶりに自分で洗濯物を干せた」
そんな小さな変化が、ご本人にとっては大きな一歩になることがあります。
2.暮らしが変わる瞬間に立ち会える
身体機能の数値だけでは測れない変化を感じられるのも訪問の魅力です。
動作練習や環境調整によって、今まで家族に頼っていたことが自分でできるようになる。活動範囲が少し広がる。
「リハビリの成果が生活につながった」と実感できる瞬間です。
訪問看護ステーションにいる作業療法士ってどんなことするの?|一般社団法人 日本作業療法士協会
3.多職種の中で専門性を発揮できる
在宅療養では、看護師、医師、ケアマネジャー、介護職、福祉用具専門相談員など、多くの専門職が関わります。
PT・OTが身体機能や生活動作について評価し、その情報をチームへ伝えることは、より安全な在宅生活を考えるうえで重要です。
特に訪問看護ステーションでは、看護師と同じチームでご利用者を支えることが大きな特徴です。
病院経験は訪問リハでも大きな武器になる
「訪問経験がないから難しそう」
そう感じるPT・OTの方もいるでしょう。
しかし、病院で培ってきた身体機能の評価、動作分析、疾患に関する知識、リスク管理などは、訪問の現場でも重要な基礎になります。
違うのは、その知識を「生活の中でどう生かすか」という視点が、より強く求められることです。
病院で身につけた専門性を捨てるのではなく、在宅というフィールドで広げていく。訪問への転職は、そんなキャリアの選択肢でもあります。
練馬区という街で「暮らしを支える」リハビリを
練馬区は2026年9月1日現在、人口約75万人。そのうち65歳以上の割合は22.0%です。
住宅地が広がる練馬区では、私たち訪問看護ステーションのスタッフも、日々地域の中を移動しながらご利用者のご自宅へ伺っています。
病院では患者さんがリハビリ室に来てくれますが、訪問では私たちがその人の暮らす街へ出ていきます。
季節の変化を感じながら住宅街を移動し、一軒一軒のお宅を訪ねる。
すると、「地域で暮らす」という言葉の意味が、少し違って見えてきます。
病院の外へ出ると、リハビリの見え方が変わる
訪問リハの魅力は、特別な技術だけにあるわけではありません。
これまで身につけてきたPT・OTとしての専門性を、目の前にある「暮らし」に結びつけられること。それこそが訪問の大きな魅力だと私たちは考えています。
「歩けるようにする」から、「歩いて何をしたいのか」へ。
「できるようにする」から、「その人らしい生活をどう取り戻すか」へ。
病院で培った経験を地域で生かしてみたい方にとって、訪問というフィールドには、PT・OTとしての専門性をさらに広げられる可能性があります。
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